最高裁判所平成19年7月13日,同月17日判決
過払い金は,法律上,不当利得(民法703条)といって,利得が法律上の原因に基づかないことを根拠にした返還請求になります。そして,不当利得では,利得者が受け取った利得について,法律上の原因に基づかないことを知っていたとき,悪意の受益者として,利得に年5%の金利を付けて返さないといけないということになっております。
では,不当利得である過払い金を受け取った業者は,悪意の受益者(民法704条)に該当し,過払い金元金に加えて,5%の利息まで返さないといけないのでしょうか。
この点について,上記判例は,
みなし弁済の成立が認められない場合,みなし弁済の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払い金を取得した者,すなわち,民法704条の悪意の受益者であると推定されると判示しました。
上記特段の事情を立証するためには,貸付け,弁済の際に業者から顧客へ交付した証書を証拠として,裁判所へ提出する必要があります。
ただ,現実問題として,全ての証書の提出を行うということは,ほぼできないような状況であり,実際には業者においてサンプルを提出する程度の立証しかできておりません。
当法律事務所が過払い金請求の依頼を受けた案件のうち,これまで上記特段の事情の立証を行えたのは,アコム1社,1案件のみになります。なぜ,その案件のみ,すべての証書を保管していたのか分かりませんし,担当の裁判官も,すべての証書が揃っている事案は初めてである旨話されていました。
ちなみに,アコムへの過払い金の案件について,数多く,手がけてきましたが,他の案件において,特段の事情の立証を行えたような案件はありませんので,特異な例かもしれません。