最高裁判所平成20年1月18日判決
従前,業者から借入れをしていたが一旦完済し,その後,同じ業者との間で契約書を作成してから再度借入れを開始した場合,前後の取引について,1個の連続した取引として計算してもよいのか争いがありました。
この争いの実益は,
① 以前の取引の完済時点が10年以上前の場合,以前の取引が消滅時効にかかり,請求ができなくなること。
② 前後の取引を充当して計算をした方が金利の関係で顧客に有利になること。
の2点になります。
この点について,判例は,
契約が別に締結されている場合,別個の金銭消費貸借契約であるため,充当計算できないことを原則としつつ,事実上,1個の連続した貸付取引と認められる特段の事情があれば,充当計算を認める旨判示しております。
そして,同特段の事情のファクターとして,以前の取引の期間,空白期間,契約書の返還の有無,ATMカード失効の有無,空白期間中の接触状況,第2契約が締結された事情,利率の異同等が挙げられており,これらの事情を総合考慮することになります。
なお,従前の取引と,後の取引との関係について,新たに契約を締結せず,従前の契約のままで取引を再開しているような場合,当然に,充当計算をされることになるはずです。
ただ,裁判官によっては,同一契約であっても,空白期間が3年に及んでいるような場合,充当計算を否定されることもあります。