自己破産とは
自己破産とは多額の借金を抱えた状態で支払いが出来なくなった場合に,裁判所へ申立てを行い,免責の判断を通じて法律上,債務の支払い免れることができる手続きを言います。
自己破産ができる場合について
どの程度借入があれば自己破産が認められるのかについて,一般的には消費者金融や信販会社から,1社あたり50万円,5ないし6社からの借入があり借入総額250万円から300万円程度と考えられています。
ただ,300万円の負債が多いのか,少ないのかはあくまでも個人の経済状況によります。
資産の状況や月手取収入により破産ができるのかどうかが変わってきます。
例えば,生活保護を受給している方については,債務総額が100万円以下であっても,破産が認められているケースが普通にあります。
自己破産のメリット・デメリット
自己破産のメリットは,返済できない程度の借り入れについて,裁判所へ自己破産申立てを行い,
免責決定を受けて,債務の支払義務の免除を受けるというところにあります。
他の任意整理や個人再生のような支払っていく債務整理手法と違い,債務全額について支払いをしないで手続きを終わらせるため,早期の経済的更生を実現させることが可能です。
これに対して,自己破産のデメリットは,ご自宅がある場合,ご自宅を手放さざるを得ないこと,また,職業によっては就けない職業(警備員など)や,一部資格の制限が生じることが挙げられます。ただ,職業や資格の制限については破産手続きが終了して免責決定が確定した後,すべての制限が解除されることになります。
加えて,自己破産のデメリットとしてお金の面での信用を失うことになるため,今後新しくカードを作ったり,借り入れをしたりということが当面の間できなくなります。
自己破産手続きの流れについて
自己破産の手続きの流れは次のとおりになります。
まず,弁護士へ依頼をして頂き弁護士から各債権者へ受任通知を郵便で一斉に発送します。受任通知が債権者に届きますと,債権者から債務者に対して直接連絡を取ったり,取り立てをしてはいけないという扱いになります。
そのため受任通知発送後,債権者からの電話や郵便すべてについて弁護士事務所が連絡窓口になります。このように,初期対応として速やかな受任通知作成・発送が必要になります。
次に受任通知発送と同時に各債権者へ取引履歴の開示を求め,また債権調査票の提出も求めていくことになります。取引履歴の開示について約定の金利が法定金利(100万円までの借り入れについて年18%,100万円以上の借り入れについて年15%)よりも高かった場合,法定金利で計算して過払い金の発生を確認します。
借り入れが数社あるうち1社でも過払い金が発生しているのであれば,過払い金の回収を先行させることにより回収額から自己破産申立てに関する弁護士費用(着手金)の捻出をしたり,税金を支払ったり生活費の支払いに充てたりすることも場合により可能です。
過払い金の調査後あるいは過払い金がなさそうな場合
法律事務所で打合せを行い,詳細なご事情の聞き取りをさせて頂き,また,破産申立てに必要な資料の提出もお願いすることになります。
このような準備を経て破産申立書類が揃いましたら,裁判所へ申立てを行います。弁護士がご依頼を受けてから破産手続きの申立てまで,特に問題がなければ3ヶ月ほどで行うことができます。
そして裁判所において審理が始まります。
裁判所ではまず財産を持っているのかどうかの調査を受けます。
預金や生命保険の解約金,自動車など20万円以上の財産を持っている場合,財産換金したうえで債権者へ按分弁済を行うか,破産管財事件の申立てをおこなうかの選択に迫られます。財産が20万円から30万円程度であれば按分弁済を選択することもありますが,それ以上の財産がある場合,破産管財事件を選択することにより,お手元に99万円までの財産を残すことが可能になります。
免責が認められる場合
自己破産手続きを申し立てる目的は,免責決定を得ることにあります。
免責とは,残っている債務について,法律上,支払義務を免除してもらう手続きをいいます。
ただ,借入れをしたお金について,どのような使い方をしても免責が認められるわけではありません。
例えば,浪費をしたり,高額な商品の購入をしたり,借入れをしたお金で度々海外旅行をしたり,パチンコ,パチスロ,競馬,競輪,競艇,宝くじ,株式の取引,不動産投資等,不適切なお金の使途があれば,破産法上,免責が認められないという免責不許可事由が定められております。
免責不許可事由に該当すると免責が認められないということになりますが,お金の使途のうち,一部,パチンコや高額商品の購入,浪費等があった場合,一切免責を認めないという扱いを行った場合,破産法の立法趣旨(法律が作られた理由,目的という意味)である破産者の経済的再起更生という目的が達成できないことになります。
そこで,破産法は,免責不許可事由があったとしても,裁判官の裁量により,免責を認めるという裁量免責という制度を規定しました。
裁量免責制度は,免責不許可事由に該当するケースで例外的に免責を認めるという建前になっておりますが,現実の実務において,裁量を緩やかに解し,なるべく破産者の救済,経済的再起更生ができるような運用を行っております。
そのため,負債総額のうち,ほぼ全て株式の取引といった極端なケースや,よほど悪質なケースでなければ,真摯に対応をすることにより,免責を認めてもらえる可能性があるでしょう。
具体的なケースで,免責不許可事由に該当する事由があるという場合,個別にご相談頂きましたら,免責を得られる可能性について,ご説明させて頂きます。
もし,借入れたお金の使途により,免責の可能性が難しいといった場合,個人再生の申立てを行うことにより,債務総額のうち,一部を支払い,残額について大幅免除を受けることにより,経済的再起更生を行うことも考えられます。
自己破産のよくある質問
どのくらい債務があれば破産できますか
一般的に,サラリーマンの方で,消費者金融1社あたり約50万円借入れ,5ないし6社から借入れがあり,債務総額250万円から300万円くらいで破産手続きを行うといわれています。
ただ,アルバイトや派遣で収入が少なかったり,安定しないような方にとっては,債務総額が100万円でも返済が苦しいものと思われます。さらに,生活保護を受給している方にとっては,数十万円の借入れでも返済ができません。
また,収入に対して,債務総額が大きくなったとしても,財産が多いようなケース,例えば,生命保険を長期間かけており,解約金が数百万円あり,保険を解約すれば借金を返済できるようであれば,自己破産することができません。
以上のことから,破産するにはどの程度の債務があればという絶対的な基準があるわけではなく,収入に対しての債務総額がどの程度あるのか,財産があるのかを総合的に考えて,債務の支払いを継続できない場合,自己破産ができることになります。
破産をするとどのようなメリット・デメリットがありますか
破産のメリットは,返済できないほど増えてしまった債務について,免責という形で法律上,支払義務が免除されることです。
当然のことながら,借り入れた債務は,元金・金利を含めて返済をしていくことが社会の基本的ルールになります。
しかしながら,借入れが増加して,毎月の手取給与から完済の見込みがないほど借金が膨らんだ場合,破産手続きを行い,免責を得ることで,一旦,リセットをして,経済的に再起できるよう,破産という形で法律が整備されているのです。
これに対し,破産のデメリットとして,お金の面での信用を失いますので,以後,カードを持てない,ローンを組めないという状態になります。ただ,一生,このような状態が続くわけではなく,破産をしてから約10年経過すれば,破産による事故情報が金融機関系,信販系,消費者金融系の各信用情報機関から抹消され,再度,カードを作ることができるようになります。
また,破産のデメリットとして,住宅ローンを組んでいる場合,自宅を手放さなければならないことになります。かかる自宅処分の不利益を回避する方法として,個人再生を選択することが考えられます。
その他,破産のデメリットとして,資格制限がかかる職業があります。一般の方が就く可能性のある仕事で,破産の資格制限がかかる職業として,警備員,保険募集員の仕事が挙げられます。これらの仕事にお就きの場合,破産をすることにより,退職をしないといけなくなるというデメリットがあります。
破産に要する期間はどの程度ですか,債権者から取立てはどうなりますか
破産に要する期間として,弁護士へ自己破産手続きの依頼を行ってから裁判所へ自己破産の申立てを行うまで,特に問題がなければ3ヶ月,破産申立てを行ってから最終の免責決定が出るまで,特に問題がなければ3ヶ月,合計6ヶ月の期間を要します。
ただ,自己破産の弁護士費用を分割払いでお支払い頂く場合,費用のお支払いが終わってから自己破産の申立てを行うことになりますので,破産申立てまでの期間が長くなることがあります。
また,申立て後,事案の内容により,例えば,ギャンブルや浪費,年齢が20代と若くして破産申立てを行うような場合,裁判所の審査で出頭を求められ,裁判所での審理の期間が長引くこともあります。
では,債権者からの取立てがどのタイミングで止まるのかといいますと,弁護士へ依頼をして頂いた段階で,全債権者に向けて受任通知を発送することになりますが,受任通知発送により,債権者からの取立てが止まり,電話,郵便のやりとりについて,法律事務所が連絡窓口になります。
ただ,支払期限の直前に依頼を受けたような場合,受任通知発送と入れ違いで債権者から取立て連絡が入ることがよくあります。このような場合,個別に,弁護士事務所へ,自己破産手続きの依頼をした旨,債権者へ告げて頂くことにより,取立てが止まることになります。
破産をすると現在の仕事に影響ありますか,勤め先に知られずに破産できますか
破産をしても現在の仕事には影響がないのが原則になります(一部,資格制限がかかる職業があります。)。破産をしたことを理由に解雇をすれば不当解雇になります。
破産手続きをしたとしても,当然には職場に知られるようなことはありません。
職場に知られる可能性があるとすれば,次の2つのケースが挙げられます。
1 まず,勤め先から借入れがある場合,勤め先も債権者になるため,破産手続きをスタートする段階で,勤め先に対しても受任通知を発送する必要が生じますので,破産手続きを行うことを職場に知られることになります。
このように勤め先を債権者にするのを回避したいため,直前に,勤め先の債務のみを優先して返済したりすれば,偏頗弁済に該当する可能性が出てきますので,対応には注意が必要です。
2 次に,勤め先に正社員として勤務して5年以上経つ場合,退職金が発生している可能性があるため,裁判所から,現時点で自己都合退職した場合の退職金の有無,金額を確認するよう求められます。この際,口頭での聞き取りではダメで,退職金額が分かる書面の提出を求められます。
その方法として,退職金規程が整備されており,給与明細記載の基本給に退職金規程記載の掛け率を掛けて,現時点での自己都合退職金額が計算できれば,給与明細と退職金規程の写しで対応が可能です。
ただ,中小規模の職場で退職金規程が整備されている方が少ないと思われます。退職金規定がなければ,勤め先にお願いをして,現時点での退職金額の有無,金額を証明する退職金証明書を作成してもらう必要があります。毎月,普通に勤務をしている従業員から,いきなり,「退職金証明書を作成してください。」と求められると,勤め先としては,「何に使うのか。」と思われるでしょう。
自己破産を行う場合,5年以上正社員勤務であれば,退職金の証明の取り寄せが絶対に必要になりますので,この際,勤め先に自己破産を知られる可能性があります。
家族に知られずに破産できますか,妻と離婚をした方がよいですか
家族に知られずに破産ができるかどうかは,一人暮らしであり,家族から借入れがなく,家族に連帯保証人になってもらったりしていない場合,知られる可能性はまずありません。
妻と離婚をした方がよいかについて,離婚してもしなくても,破産手続きには影響がありません。離婚をするかどうかよりも,ご主人の借金に対して,奥様が連帯保証をしているかが重要になります。連帯保証をしていれば,離婚をしても,連帯保証債務の支払義務が残りますし,連帯保証をしていなければ,夫婦であるということで当然に夫の借金の請求が妻に行くということにはなりませんので,離婚をする必要性がないということになります。
もちろん,破産が原因で夫婦関係が壊れてしまい,破産と同時期に離婚をするというケースもあります。このような場合,離婚に際し,高額の財産分与を行うと,破産管財人に財産分与を否認される恐れがありますので,注意が必要です。
逆にいうと,家族と同居している場合,家族から借り入れている場合,家族に連帯保証人になってもらっている場合には,破産を家族に知られる可能性があります。以下で個別に説明致します。
1 家族と同居している場合
破産を申し立てる際の必要書類として,家計収支表というものを作成する必要があります。家計収支表には同居の家族全員の収入と支出を集計することが求められます。例えば,実家で両親と同居していて,父がサラリーマン,母がパートの場合,両親の給与明細を提出することが求められます。また,電気,ガス,水道,電話料金の領収書や引落し銀行口座のコピーの提出も求められますので,両親に協力を求める際,破産を行うことが明らかになる可能性があります。
2 家族から借入れがある場合
家族から借入れがある場合,家族も債権者になるため,受任通知を発送する必要があります。弁護士名で自己破産の受任通知を家族に発送すれば,当然のことながら,破産を行うということが家族に明らかになります。
ただ,家族,例えば,親からの借入れがあったとしても,これまで一切返済をしたことがなく,実質的に親からの援助(贈与)であるような場合,弁済義務がなく,親が債権者に該当しないため,受任通知を発送しないという扱いもあり得ます。親族からの借入れか,援助かは,実態を確認したうえでの判断になります。
3 家族に連帯保証人になってもらっている場合
家族に連帯保証人になってもらっている場合,主債務者が破産手続きを行うことにより,連帯保証人である家族に対し,債権者から,一括請求の請求書が送付され,返済を求められることになります。そのため,家族に連帯保証人になってもらっている場合,破産を行うということが家族に明らかになります。このような場合,連帯保証人に迷惑がかかるため,事前に,破産を行うこと,連帯保証の請求が行くため,迷惑がかかることを素直に説明して謝っておく方がよいでしょう。
破産をすると家財道具を差し押さえられたりするのですか
自己破産をした場合であっても,テレビ,冷蔵庫,洗濯機,エアコンその他家財道具一式について,差押禁止財産とされており,破産手続きでの換価処分の対象外とされております。
そのため,裁判所の職員の方がご自宅へ来て,家財道具を処分されるというようなことはありません。
ただ,家財道具であっても,ローンが残っている場合,所有権留保の効力により,債権者から返却を求められることになります。
賃貸で居住している家を出て行かないといけませんか,持ち家の場合はどうですか
自己破産をしても,現在,居住している賃貸の家を出て行く必要はありません。
自己破産の状態になったとしても,賃貸で借りている家賃の滞納がなければ,大家さんを債権者として扱うことはありませんので,そもそも,受任通知を発送することはありません。
仮に,家賃の滞納額がある程度の金額になっているような場合,退去前提で,滞納家賃も破産手続きで債権として計上し,免責を得ることも可能です。
居住している自宅が持ち家の場合,ローンが残っていればもちろん,ローンがない自宅であっても,破産手続き上,処分の対象になります。
破産手続きをするに際し,自宅だけは残したいというので,親族等に買い取ってもらいたいというご相談もあります。要するに,一旦,親族に適正な金額で買い取ってもらったうえで,リースバックという形で賃貸してもらうというやり方になります。
現実に,リースバックを希望される方がおられますが,親族であっても買い取ってもらう必要があり,大きなお金を動かさないといけません。不動産を購入する代金を一括で準備するか,住宅ローンを組むことになりますが,そこまでして協力をしてもらえるのか,経済的に協力が可能な方なのかというハードルがあり,実現できるケースは多くはありません。
オーバーローン状態の自宅がありますが,破産で差額分の処理ができますか
オーバーローン状態の自宅がある場合,破産をすれば,差額分(マイナス分)について,破産債権として計上をし,同時廃止手続きで免責を得るという形で処理をすることが可能です。
オーバーローン状態に自宅がある場合,先に自宅を処分すれば,自宅の売却代金が住宅ローンの支払いに充てられた後,ローンの額が確定されることになります。この場合,残ったローンの額を破産で計上するため,イメージがしやすいと思います。
これに対し,オーバーローン状態で自宅売却が未了の場合,マイナスになる金額が確定していませんが,その状態で破産手続上,債権として計上し,破産,免責を得ることができます。
ただ,オーバーローン状態が明らかであれば,上記のような処理ができますが,固定資産税評価額ベースの金額と住宅ローンの金額にあまり差がないような場合,オーバーローン状態が明らかとはいえませんので,簡易な処理ができず,破産管財事件になる可能性があります。
この点について,大阪地裁での基準は,住宅ローンの残額が固定資産税評価額の2倍を超える場合,あるいは,住宅ローンの残額が固定資産税評価額の1.5倍超2倍までで,住宅ローンの残額が住宅時価査定額の1.5倍超の場合であれば,明らかなオーバーローン状態として,同時廃止手続きで破産処理ができるという運用をしています。
破産をすると今まで支払ってきた生命保険はどうなりますか
破産をしても,今まで支払ってきた生命保険を当然に解約したりする必要はありません。
生命保険がどうなるのかは,現時点での生命保険の解約返戻金がどの程度あるかによります。
掛け捨てで,生命保険の解約返戻金がない場合,解約返戻金があるが20万円未満の場合は,そのまま保険の掛け金を支払い続けることにより,保険を残すことができます。
ちなみに,解約金が20万円未満という条件について,例えば,解約返戻金が100万円あるけれども,保険の解約金の範囲で保険会社から借入れできる保険があり(契約者貸付といいます。),契約者貸付で85万円借り入れているため,15万円しか解約しても戻ってこないという場合,解約返戻金が20万円未満という条件を満たすことになります。
これに対し,解約返戻金が20万円以上の場合,財産があるという判断になるため,保険を解約して配当に回して同時廃止手続きを選択するか,破産管財事件にして,自由財産という形で99万円までの財産として,保険を残すという二通りの対処方法があります。
さらに,保険の解約金が99万円を超えるような場合,破産管財事件の自由財産として残せる財産が99万円までですので,超えている分について,別途,埋め合わせる前提で保険を残すということも可能です。
破産をするとローンが残っている自動車はどうなりますか
破産をすると,ローンが残っている自動車について,支払いを継続することができず,ローン会社から自動車の返却を求められ,自動車を返却しないといけないということになります。
破産をご依頼頂く際,駆け込み的に自動車のローンのみを返済することは,偏波弁済といって,特定の債権者のみ優先して取り扱ったということになり,破産法上,免責不許可事由に該当することになります。そのため,自動車のローンのみの支払いをすることができず,結果,ローン不払いで自動車の返却という形になってしまうのです。
では,仕事上,自動車が必要な場合どうしたらよいかというと,偏波弁済というのは,自分で自動車のローンのみに支払うといけないのであって,例えば,親からの援助で自動車ローンの残金を一括で親に支払ってもらうような場合,偏波弁済には当たらないため,自動車を残すことができます。ただ,親に一括で支払ってもらった後,親へ分割で返済すれば,結果的に同じことなので認められません。
あるいは,一旦,ローンが残っている自動車を返却したうえで,中古で安価な自動車を現金一括払いで購入することは禁止されませんので,このような方法も考えられます。
破産をすると連帯保証人へ請求がいくのでしょうか
自己破産を行うことにより,連帯保証人へ請求が行くことになります。
連帯保証とは,主債務者に事故があり,支払いができなくなったときに,支払いを担保するため制度です。そのため,自己破産の準備に入り,受任通知を発送すると,金融機関から期限を定めてその間に一括支払いができないときは期限の利益を喪失し,連帯保証人へ請求がいくことになります。
連帯保証人への請求も一括で請求されることになります。請求額によって,一括で弁済できないような高額の連帯保証債務が残った場合,連帯保証人と債権者の交渉により,分割支払いの条件を定めることになります。連帯保証債務の支払条件について,現在の収入状況や資産の状況を示したうえで,銀行等債権者と交渉をすれば,ある程度,条件面で譲歩してもらえることが一般的です。
なお,連帯保証債務が高額であり,かつ連帯保証人の方が大きな財産を持っていないような場合,連帯保証人の方も自己破産を行うというケースも少なくありません。
具体例として,夫が事業をしていて妻が連帯保証をしている場合,夫が住宅ローンを借り入れる際,妻が連帯保証をした場合,子供の債務を親が連帯保証した場合,法人と法人の代表者などが挙げられます。
借金の使途でギャンブル,浪費などがあっても破産できますか
借金の使途でギャンブルや浪費がある場合,破産法上,免責不許可事由に該当しますが,裁判官の裁量により免責(裁量免責)が認められる可能性があります。
借金の使途や事情を問わず,どんなケースでも免責を認めることには問題があります。そのため,破産法は,免責不許可事由という,免責が許可されない事由を規定することにしました。
ただ,借金の使途でギャンブルや浪費があれば,一切,免責が認められないとしてしまうと硬直的すぎ,多重債務を負った方の経済的な再起という破産法の目的が達成することができません。
そのため,破産法上,ギャンブルや浪費があったとしても,裁判官の裁量により,免責を認める裁量免責という方法を採用しています。
そして,例外にあたる裁量免責について,過去に破産をしたことがなければ,広めに認めていくという運用になっているのが実情です。
要するに,ギャンブルや浪費があったとしても,免責が認められるかどうかは,程度問題ということであり,例えば,借入れの使途がほぼすべてギャンブルや浪費であれば,免責を認めることに問題があるかもしれませんが,一部ギャンブル,浪費があったとしても,免責が認められる可能性が高いということです。
具体的に,どの程度,ギャンブルや浪費があれば,免責が認められないかどうかは総合判断になりますので,個別にお問合せ頂きますようお願い致します。
また,ギャンブル,浪費の程度が重たくて,免責が見込めないような場合,個人再生手続きを検討することになります。
昔,一度,破産をしていますが破産できますか
過去に一度破産をしている場合,一回目の破産と違い,裁判所での判断が厳しくなりますが,ご事情により破産ができる可能性があります。
破産法上の制約として,破産で免責決定が確定した後,7年間は破産ができないという法律上の制約があります。
この期間を経過した後,2度目の破産ができるかについて,2度目の債務が嵩んだ事情によります。
通常,初めての破産であれば,よほど特殊な事情がない限り,破産で免責を認めてもらっているのが実情です。
これに対し,2度目の破産の場合,自己申告になりますが,過去の破産歴を申告する必要があり,申告をすると裁判所での審尋が行われ,事情を厳密に審査されることになります。
当法律事務所でも,実際に,2度目の破産の依頼を受けて,免責を得ているケースが少なからずあります。例えば,若いときに破産をして,長期間経過後,高齢になり債務があり,支払いができなかったケース,同様に,生活保護を受給するようになったケースなど,ある程度,期間があいているケースが多いです。
個別の事案で,2回目の破産ができるかどうかは,総合判断になりますので,ご相談頂きましたら,免責の可能性について,検討させて頂きます。
自由財産とはなんですか
自由財産とは,破産をしても,換価(現金化),配当に回らず,自分で自由に使うことができる財産のことをいいます。
自由財産の種類として,99万円以下の金銭,法律上差押えが禁止された財産(衣類,家電等,通常の家庭にある生活必需品)等が挙げられます。これらを本来的自由財産といいます。
これに加えて,破産法上,破産者の経済的更生のため,その他の財産についても自由財産として残す道を認めています。これを自由財産の拡張制度といいます。
自由財産の拡張制度を利用するためには,同時廃止事件ではなく,破産管財事件として自己破産の申立てを行う必要があります。
また,自由財産として認められる財産として,預貯金,保険の契約返戻金,自動車,賃借している自宅の敷金,保証金,退職金,電話加入権,過払い金が挙げられます。破産管財事件で自己破産の申立てを行い,自由財産拡張制度を利用することにより,これらの財産を合計して,99万円までの財産を残すことができます。
では,99万円を超えて財産を残すことができないかというと,99万円を超えて財産の拡張を認めることが破産者の経済的更生に必要不可欠であるという特段の事情が認められる場合でなければ,認められないという不可欠性の要件が要求され,実情として,ほとんど認められていません。
また,上記財産以外の財産を拡張できるかというと,その財産の拡張を認めることが破産者の経済的更生に必要かつ相当であるという事情が認められる必要があるという,相当性の要件が要求され,事情によっては拡張が認められることもあります。
同時廃止と破産管財事件はどう違うのでしょうか
同時廃止とは,破産申立事件のうち,債務者に財産がないことが明らかな場合に,破産管財人を選任するという手続きを省略して行う破産事件のことです。
これに対し,破産管財事件とは,破産申立事件のうち,破産管財人選任の手続きを経て審理する破産事件のことをいいます。
破産とは,破産者の財産を換価(現金化)して,配当を行う手続きをいいます。
そのため,破産者に財産がないことが明らかであれば,破産の申立後,破産管財人を選任しても無駄に終わってしまうことから,同時廃止という形で簡略化された審査方法を認めたのです。
そして,財産がないことが明らかといえるためには,預金,保険解約金,自動車,敷金,退職金,電話加入権,過払い金がそれぞれ,20万円未満であることが必要です。また,仕事について,サラリーマン,パート,アルバイト,無職,主婦等,収入の有無,金額が明確であることが必要であり,個人事業をしているような場合,収支が明確でないため,財産がなくても破産管財事件になるのが原則です。
破産管財事件になる場合として,サラリーマン等,給与所得者であっても,20万円以上の財産がある場合,個人事業主,法人の代表者が挙げられます。
同時廃止と破産管財事件の違いとして,破産管財事件は,破産管財人が選任され,厳格な審査が行われることになります。また,費用の面でも,破産管財人の費用を申立人が負担しないといけませんので,負担が増えることになります。
住民税,国民健康保険,国民年金等の税金の滞納はどうなりますか
自己破産をしたとしても,住民税,国民健康保険,国民年金等の公租公課が免責されることはなく,支払義務がそのまま残ることになります。
自己破産の申立てを行い,裁判所から,免責という形で債務の支払義務を免除してもらえる対象は,あくまでも金融機関,信販会社,消費者金融,取引先,家族知人友人といった民間からの借入れに限ります。
これに対し,公租公課について,もともと,破産,免責の対象外になるため,破産手続きを行ったとしても,なんら影響を受けることはないのです。
そのため,公租公課については,破産手続きとは別に,官公庁と支払いの条件を個別に交渉をして,支払いを行う必要性があります。この際,破産手続きを行っていることを公租公課を滞納している官公庁に告げてから,支払い条件の交渉を行えば,支払条件面において,柔軟に対応してもらえることもあります。公租公課滞納分の支払条件交渉については,個別にご相談ください。
私は公務員ですが破産により退職しないといけませんか
国家公務員の方,地方公務員の方ともに,自己破産を行ったとしても,法律上,欠格事由に該当しないため,退職しなければいけないということにはなりません。つまり,自己破産をしたとしても,これまでどおり公務員の仕事を継続して行って行くことができるということになります。
当法律事務所においても,公務員の方から自己破産の依頼を受けて,破産申立てを行い,免責を得た案件が多数ありますが,破産手続中,破産後ともに解雇されたりした案件はありません。
よくある状況として,公務員の方で,勤め先関係から安い金利で融資をしてもらえることから,大阪市職員互助会や大阪市共済組合などから借入れをしている方がおられます。このような場合,当然のことながら,互助会や共済組合も債権者になるため,自己破産の受任に際し,受任通知を発送することになり,自己破産を行うことを知らせることになりますが,特に,問題が生じるようなことはありません。
ただし,一部,特別職の公務員の場合,例外がありますので,具体的に確認をするようにしてください。
過去に個人再生をしましたが,支払ができなくなった場合,自己破産ができますか。
過去に申立てをした個人再生について,小規模個人再生であり,かつ,ハードシップ免責を受けていない場合,自己破産の申立てを行い,免責決定を受けることに法的な問題はありません。
まず,個人再生には,小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類がありますが,実務上,ほぼ小規模個人再生での申立てが行われておりますので,小規模個人再生であるという条件は満たすものと思われます。
次に,ハードシップ免責とは,個人再生手続認可後,支払いがある程度進んだが,支払継続できないような事情が生じた場合,免責の申立てを認めるという制度です。
その条件として,
1 責めに帰することができない事情で再生計画履行が極めて困難になったこと
2 再生計画の各債権について,4分の3以上の返済が終了していること
3 免責決定が債権者の一般的利益に反するものでないこと
4 再生計画の変更をすることが極めて困難であること
が挙げられます。
このうち,客観的に明確なのが,4分の3以上の返済になりますので,条件を満たすようであれば,ハードシップ免責の申立てを検討する余地がありますが,全然,そのような状態ではないという場合,別途,自己破産申立てを検討された方がよいかもしれません。
免責審尋とは何ですか,どのようなことを聞かれますか
免責審尋とは,裁判所において,免責の判断をする際,破産を申し立てている方から事情を聞く手続のことです。
大阪地裁の運用として,破産申立てをした個人の方について,特に,免責不許可事由等の問題がなければ,審尋を行うことなく,書面審査のみで免責決定が出ております。
これに対し,免責不許可事由がある方の場合,例えば,ギャンブルや浪費があれば裁判所へ免責審尋期日に呼び出されて事情を聞かれることになります。ただ,大阪の場合,人口が多いため,破産事件の件数も多くなり,免責審尋を集団で行う形がとられております。
集団での免責審尋とは,破産を申し立てている方たちを10名から15名くらい同時に審尋を行うという運用です。
主に聞かれる内容として,債務が免責によってなくなっているのかどうか,免責不許可事由の存在及び内容,裁量免責という制度があること,免責制度の趣旨,今後の心構えなどになります。
破産をすれば,給料の差押えは止まりますか。
破産をするまでの間に,給料の差押えが行われていたとしても,破産申立てを行い,破産手続開始決定が出ることにより,給料の差押えが解除されることになります。
ただし,給料の差押えが解除されるのは,民間の債権に限りますので,公租公課(税金,氏府民税,固定資産税等)については,破産手続開始決定が出たとしても,給料の差押えが解除されることはありません。
破産をすると国家試験の受験資格がなくなりますか。
破産をしても,司法試験,司法書士試験,税理士試験,宅建,看護師試験等,各試験の受験資格には影響しない扱いになっております。
そのため,破産手続中であっても,司法試験,司法書士試験,税理士試験,宅建,看護師試験等を受験することに問題はありません。
次に,司法試験,司法書士試験,税理士試験,宅建等,試験に合格した場合,破産をしていると,欠格事由といって,各資格の登録を行うことができないことになっております。
ただ,破産をすると,ずっと資格の登録をできないわけではなく,破産手続きが廃止になり,免責が出ることにより復権すれば,破産法上の制約がなくなるため,破産後,資格登録を行うことができる状態になります。